立正大学文学部社会学科教授
ケンブリッジ大学大学院
犯罪学研究科修了
★【NTS Journal】にインタビュー記事が掲載されました。
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★【ニューズウィーク】に「危険ドラッグ」について記事を書きました。
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★【Yahoo! ニュース】に「不審者問題」について記事を書きました。
★NHK「視点・論点」にリモート出演しました。
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★ 作製方法を間違えた「地域安全マップ」に、ご注意ください。
地域安全マップを正しく作るには、2つの条件を満たす必要があります。
1 「入りやすい」「見えにくい」というキーワード ∵ 未来の犯罪を予測(危険性を測定)するための判断基準(「人通り」「街灯」「死角」はNGワードです)。
2 写真 ∵ 写真は景色を再現したもの(マップづくりは、景色解読力の向上という「人づくり」であって、地図の作製という「物づくり」ではありません。犯罪者は、地図ではなく、景色を見ながら犯罪を始めるかどうかを決めています。子どもも、地図ではなく、景色を見ながら歩いています)。
犯罪学は、刑法、加害者、被害者という未開の領域を、一つひとつ順番に開拓してきた。そして、最後にたどり着いた未開地が犯行空間である。
犯行空間を対象とする学問は、「犯罪機会論」(Crime Opportunity Theory)と呼ばれている。空間にちりばめられた機会に注目するからだ。
では、犯罪の機会(チャンス)とは何か。それは、犯罪が成功しそうな雰囲気のことである。そういう雰囲気があれば、犯罪をしたくなるかもしれない。しかし、そういう雰囲気がなければ、犯罪をあきらめるだろう。つまり、この雰囲気の有無が犯罪の発生を左右するのである。
人々の間では、犯罪の動機があれば犯罪は起こるというのが常識になっている。しかし、それは間違いだ。犯罪の動機があっても、それだけでは犯罪は起こらない。犯罪の動機を抱えた人が犯罪の機会に出会ったときに、初めて犯罪は起こる。それはまるで、体にたまった静電気(動機)が金属(機会)に近づくと、火花放電(犯罪)が起こるようなものだ。
――このように犯罪機会論では「機会なければ犯罪なし」と考える。
では犯罪の機会、つまり犯罪が成功しそうな雰囲気は、どのようにして生まれるのだろうか。
雰囲気を醸し出すのは、場所であり、状況であり、環境である。したがって、犯罪が成功しそうな雰囲気を作り出す場所・状況・環境には、何らかの特徴があるはずだ。その特徴こそ、犯罪の動機を抱えた人に、犯罪が成功しそうだと思わせてしまう条件なのである。
犯罪機会論が学問の表舞台に登場したのは20世紀後半のことである。
もっとも、抽象的な理論だけでは犯罪機会を減らすことは難しい。実際に犯罪機会を減らすには、理論の操作性を高め、だれでも、いつでも、どこででも理論を実践できるようにする必要がある。
そこで、犯罪機会論の内容を単純化し、日常生活で手軽に活用できるようにしたのが「犯罪抑止の3要素」である。